縄田正樹編集長 × 浅野紗紀 ~WonderNotes Inspire~刺激人
慶應義塾大学文学部2年
趣味:読書、アニメ鑑賞
お気に入りスポット:美術館、プラネタリウム
将来の夢:アニメに関わる仕事
『週刊少年サンデー』編集長
1965年生まれ
1987年早稲田大学法学部卒業
1987年小学館入社
≪携わった主な作品≫
『うしおととら』、『名探偵コナン』、『MAJOR』、『烈火の炎』、『犬夜叉』、他多数
浅野:よろしくお願いします!私はものすごく漫画が好きでして、例えば『サンデー』さんだったら、高橋留美子さんの『人魚の森』とか、『犬夜叉』とかすごい好きで、もちろん『コナン』とかも好きですし、結構イラストとか描いてたこともあったりして。
縄田:そうなんですか!?詳しいですね。
浅野:他にも『サンデー』さんじゃないんですけど、『ブラックラグーン』とかも好きで。
縄田:『サンデージェネックス』です。今人気ありますもんね。
浅野:では、さっそく質問させていただきます。まず縄田さんの経歴からお聞きしたいと思います。編集長になろうと思ったきっかけは何ですか?
縄田:そうですね、入社時から漫画の編集をやりたいと思っていたんですが、うまい具合に編集部に配属させてもらえたのでね。編集長になったというのは、もちろんある段階で編集長を志してはいましたけれども、結果としてそうなっただけであって。
浅野:何歳頃から具体的に漫画の編集をやりたいと思っていたんですか?
縄田:就職活動して、どういう道に進みたいかなって思った時に、出版に興味があって。それで、出版社に入って自分に何ができるかなって考えたら、漫画の雑誌を作るということなら自分もできるんじゃないかなと思ったのがきっかけだと思います。
浅野:最初から漫画の編集部に配属されたんですか?
縄田:そうです。私は入社してすぐに、『ビックコミック』という雑誌に4年間居て、その後、『少年サンデー』編集部に異動して20年くらいやっています。
浅野:最初は編集者からやっていたんですよね?
縄田:もちろんそうです。最初は一番下っ端で現場の編集者をやっていましたよ。『ビックコミック』を4年やって、その後、『サンデー』で5~6年やったのかな。10年くらい現場をやってましたね。そしてデスクになって。
浅野:デスクっていうのは?
縄田:デスクっていうのは、昔でいえば係長みたいなものかな。役がついて責任あるリーダーの一人として働くことです。
浅野:漫画の編集は具体的にどんな仕事をするんですか?
縄田:漫画の編集は、一般的な雑誌とはやっぱりかなり違っていて、漫画を作るっていうのがほとんどの仕事ですね。漫画雑誌って、9割くらい漫画だけにページが使われているので、仕事の内容の9割も漫画を作るという仕事ですね。ですから、漫画家さんと一緒に打ち合わせをして原稿を頂いて、校了って言って印刷屋さんに渡すまでの作業をやるんですね。それが仕事の主ですね。
もちろんヒット作を出すというのが最も重要な仕事なんですけどね。ですから、どうやったらたくさんの読者の人に読んでもらえるかっていうのを漫画家さんとの打ち合わせで考えたりしていますね。ただ、漫画家さんは必ずしもヒット作を作ろうとして描いている人だけではなくて、面白い漫画を作りたい、描きたいものを描きたいっていう考えの方もいるので、編集者的な視点で意見を出して、より面白いものを作るように心がけています。
昔は、漫画は右肩上がりで売れていた時代があったんです。今も落ちてはいないんですが、漫画のマーケットが均衡しているので、編集者は作るだけでなくてどうやって売るのかということなんかを社内の販売や宣伝と連携しながら考えたりするのも仕事になってきていますね。ここ数年は、そのウエイトもかなり大きくなっていますね。
浅野:編集長はそれを取りまとめる役ですか?
縄田:編集長は上にいて、全体を見るっていうことですね。私は現場の担当を持っていませんので、雑誌全体をどういう方向に向かわせるのかとか、新連載を作るために、漫画家さんの所へ現場の編集者と一緒に話をしに行ったりしています。
後は、映像化の話なども出ますので、テレビ局さんや映画会社さん、ゲーム会社さんと打ち合わせもしますね。他にも、スポンサーさんとの話し合いをします。現場の頃は対漫画家さんとやっていたんですけど、編集長になると、漫画家さん以外にも少年サンデーと連携を組んで下さる方たちと、いろんな話し合いをするというのが編集長の仕事ですね。
浅野:漫画雑誌が他の雑誌と違うところはありますか?
縄田:そうですね、普通の雑誌は、例えば今流行っているレストランを取材するという企画を立てるとするじゃないですか。それを実際取材に行って、カメラで写真を撮って、原稿を書いて、デザイナーに発注して、最終的にページを作ります。
そういう情報誌っていうのは、自分のページとして、ある程度最後まで作りますから、自分が作り手だという感覚があると思うんですけど、漫画の場合はですね、最終的に描くのは漫画家さんなので自分は最終的な作り手っていう意識はないんですよね。どちらかというと、漫画家さんに面白いものを描かせるという触媒的な立場なんですよね。まぁ、いろんなやり方があるんですけどね。自分でシナリオを書いてしまう編集者もいますしね。
でも、それにしたって最終的には漫画家さんが描かないといけないわけですから、やっぱりそこの所は普通の編集者とは意識も違いますし、やっている具体的な作業も違いますよね。後、日本では漫画の単行本って100万部とか、ものすごく売れるので、漫画の担当者っていうのは単行本にしてどのくらい売れるのかっていうのもすごく意識しているんですよね。漫画の場合は単行本で売れるのかっていうのを最初の企画の段階で考えますから。そこが一般の雑誌とは違うのかなと思います。
浅野:作る工程で工夫していることはありますか?
縄田:まずは、作る前にマーケティングがありますよね。読者がどういうものを求めているのかっていうのを考えます。その後、実際に作られた作品を今度はどうやって売るかっていうマーケティングがもう一回あります。実際作品はあるわけですから、この作品を読みたいと思っている読者に届くまでにどういうことをやったらいいのかを考えます。
例えば、女子大生に読ませるためにはどういうマーケティングがいいのかを計画します。女子大に行って大学の構内でイベントやって本を紹介すれば波及効果があるんじゃないのかとか。あるいは、女子大生がよく読むような雑誌、テレビに広告を入れてみようとか。そういうマーケティングがありますよね。まぁ、マーケティングばかりではないんですが、少しでも多く売るためにやっているのはそういうことをやっていますね。
浅野:編集の仕事って多忙で不規則というイメージがあるんですが、縄田さんはどのようなサイクルで1日動いているんですか?
縄田:編集長は比較的早く会社に出るんですが、現場の編集者は遅いですよね。お昼過ぎくらいに出てくる人が多いですね。私は午前中なるべく早く来ようにとは思っていますけれどね。ただ、どうしても漫画家さんの仕事が夜中になることが多いので、それに合わせると夜は遅くなってしまいますよね。お昼前に会社に来て仕事して、帰るのは深夜になります。とは言っても、その間に会食したりとか、仕事終わった後に編集者や漫画家さんと仕事の話だけではなくラフな感じでお酒飲んだりすることはありますけれども。
浅野:そんな不規則で多忙なお仕事ですが、何かリフレッシュ法とかありますか?
縄田:基本的に土日は休日ですから、土日に休んでリフレッシュするっていうのは普通のサラリーマンと一緒だと思います。ただ、編集者っていうのは、結構待ちの時間が多いんですよね。例えば、デザイナーさんがデザインをしてくれている時とか、漫画家が漫画を描いている時とか。
もちろん、待ちの時間に仕事をしているんですけど、その時間に本を読む人もいれば、映画を観る人もいますね。それも仕事だといえば仕事なんですけどね。だから割りとずうっと仕事が続いているのが編集の仕事なんですよ。一日中なんとなく仕事があるというような感じですかね。
浅野:生活も仕事に沿ってという感じですか?
縄田:そうですね、例えば夜8時に終わって家に帰れても、夜中の12時に漫画家さんから絵コンテが上がってきたら家にFAXで送ってもらいますし。電話のやりとりで内容に関してチェックをするということも普通にあります。そうすると、どこが仕事でどこがプライベートかっていう切れ目がないですよね。漫画の編集ってわりとそういう感じなんですよ。漫画家さんに合わせて自分のスケジュールを組み立てているので、ある程度しょうがないんですよ。
浅野:漫画の締め切りってどのくらい前なんですか?
縄田:締め切りは『サンデー』の場合は、だいたい発売の2週間前が校了日ですね。
浅野:結構前なんですね。
縄田:そうですね、週刊誌は部数が多いですしね。それに、刷る時間もかかりますし、全国に配送する時間もかかるので2週間前くらいが普通だと思います。