三浦敏宏副編集長 × 足立悠馬 ~WonderNotes Inspire~刺激人
荻野:大学時代にこれをやっておくと良いということはありますか?
三浦:小説家さんとかは「俺は今日から小説家だ!」って言えばなれるんですけど、「俺は編集者だ」って言ったからって、編集者にはなれる訳ではないですよね。
だから、まずは社員にならずともどうにかして業界に入り込むとか、何かしら関わることが大事ですよね。
それから、編集者を目指す人であれば、やっていた方がいいと思うのは、本と、漫画志望なら漫画を読んでおくことですよね。僕もそんなに読んでなかった方かなって思っていたんですけど、最近の下の人よりは、かなり読んでいるなって思いますし。
荻野:そうですよね。確かに個人的にも本は読んでおいた方が良いって思います。
三浦:うん。後は、映画とかね。創作物の編集者になりたいんだったら、創作物は見といた方がいいし。もうね、手当たり次第見ておいた方がいいと思いますよ。そうやって最低限の知識を得ることで、人と話せる様になるじゃないですか。あの漫画の、あの映画の、あの小説の、あのシーンとかあのセリフとか。打ち合わせで同じイメージ、方向を見るための共通言語として。創作ってそういうイメージを毎回洗練していったり、足していったりする作業だと思いますし。最低限クリエーターという人たちとやりとりをするための言語を持たなきゃいけないですから。
荻野:なるほど。言語ですか。
三浦:でも、最近いわゆるサブカルチャーの存在が難しくというか、弱くなっているのが少し残念に思いますよね。以前、「サブカルチャー」といわれるものを良しとする流行りがあった気がします。まあ実際は、僕には難しくてよくわからないので「サブカルごっこ」でしかないですけど、わかったような顔をしてました。忘れたいです。要は「よくわかんないけど、あれっていいよな!俺他の人と違うし!」っていう恥ずかしい文化なんですが。
例えば今ってテレビのCM見て、その映画を観に行くって人が多い気がしますよね。単館上映とかの映画の入りとか見てても、「俺他の人と違うし!」と背伸びする学生が減っているような気がしますよね。車も買わないとか、背伸びをしないで身の丈で暮らすっていうのはすごく素晴らしいと思うんですよ。僕らは車買わないとモテないみたいな時代でしたけど。
今の人たちは、そういう所がすごくフラットというか、謙虚でいいと思うんです。と、同時に今目の前にあるもので済ますみたいな所があるような気がしていて。たいていの場合は所詮、(サブカル)ごっこなんですけど、ごっこをすることで、自分が理解出来ないジャンルに背伸びして手を出してみると、結果ちょっとだけとっかかりがわかる様になることで成長すると思うんですよ。ちょっと背伸びして身の丈以上に吸収しようと思わないと、縮小再生産になっていってしまう気がしますし。だから背伸びした方がいいと思いますけどね。
荻野:学生だからこそっていうことですよね。
三浦:「身の丈だけじゃダメ!背伸びしなきゃ大きくなれない!」って『週刊プロレス』で天龍が言ってました(笑)。
荻野:いい言葉ですね(笑)。ありがとうございます!次の質問なんですが、どんな学生が出版業界に向いていると思いますか?
三浦:みんなが受け入れているエンターテイメントも受け入れつつも、皆がまだ気付いていないものとか、みんながおもしろいっていいにくい作品に手を広げていっていろんなものに触れるのがいいんじゃないのかなぁ、この仕事は。本だけじゃなく、映画とか音楽とかでもいいんですよ。
さっきも言いましたけど、マニアックという言葉だけで片付けられない様なサブカルごっこをやるといいと思いますけどね。最近の新入社員とかを見ていると、「こんな映画も見てないの?」っていうことありますしね。無理してわかんない映画をわかったふりするっていうのも大事だと思いますね。
荻野:今日はありがとうございました!
三浦:いえ、こちらこそありがとうございました。