吉原伸一郎編集者 × 足立悠馬 ~WonderNotes Inspire~刺激人
足立:次に、出版業界を目指す学生にアドバイスを頂きたいんですが、吉原さんは、編集の仕事にどんな学生が向いていると思いますか?
吉原:漫画家さんに「これを描いてください!」ってハッキリ言える人。なかなか言えないんですけどね。
足立:それは、遠慮や気後れがあるからですか?
吉原:自信がないからですかね。本当はこっちを描いて欲しいけど、相手の表情を見てとっさに変更することもありますげど…
足立:では、編集者として必要なものは何かありますか?
吉原:人見知りしないこと。目の前の人とコミュニケーションとって楽しませないといけないからね。バカを曝け出す能力は必要かと。僕の場合は、オバサンっぽいんですって、僕に男性を感じない。だから女性の作家さんは「何でも話していいかなー」って感じになるみたいです。全然自覚ないんですけど(笑)。やっぱり相手の心に潜り込まないとできない仕事だかと思います。編集者を目指す人は大変だと思います。漫画家や小説家は自分で名乗ればなれる仕事ですけど、編集者は言ってもなれませんからね。
足立:そうなんですか。出版や編集の仕事を目指す学生が多いと思うので、吉原さんから何かメッセージがあれば聞かせて頂きたいんですが。
吉原:漫画だけじゃないんですが、「創作物で強烈に好きなものがあるかないか」だと思います。それがないと辛いんじゃないかな。漫画の良いところは、「最小ユニットで世界を“あっ”と言わせられる」。本当にゼロから制作費もほとんどかからないで、紙とペンと打ち合わせだけで(笑)。そういう意味ではおもしろいです。でも、自分に向き不向きは入ってからじゃないとわからないんじゃないですかね。
今、言ってるのは僕だけの理論で、違う理論でやってる人もいるし、違う人がいなきゃいけないしね。…誰でもできますよ(笑)。潜り込めさえすれば。今いい例ばかり話してますけど、通らなかった企画もたくさんあるんですよ。未だに「あの時に載ってればな」とか「この人、このタイミングでデビューしなきゃもっとうまくいってたんじゃないか」とか後悔ばっかりですよ。
足立:今でも思い出したくない記憶とかあるんですか?
吉原:僕の場合は、思い出したくないというよりも、「いつかやってやろう」っていう気持ち方が大きいかも(笑)。それは10年スパンの場合もある。虎視眈々と狙い続けます。
でも、今、担当している漫画家のよしながふみさんのようにお会いして1年半であっという間に連載を始める場合もあります。