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酒井秀行ディレクター × 白田有沙~WonderNotes Inspire~刺激人

前編

後編

白田:プライベートのこともお聞きしたいのですが。酒井さんのおススメ映画はありますか?

酒井:僕がこれまでに一番(多く)見た映画は『ザ・エージェント』。観たことありますか?

白田:いえ、観たことないです。

酒井:ぜひ観て下さい、これはスポーツの仕事を意識している方にはおすすめです!僕が初めて観たのが、いまの白田さんと同じ大学3年生の頃。アメリカのスポーツ業界の代理人、エージェントの話です。物語は、主人公のトム・クルーズ演じる金儲け主義でやり手のエージェントが、ある日、ふと良心に目覚めて本来あるべきエージェントの姿勢を会社に提案するんです。

すると主人公はバサっと会社をクビになってしまい、彼の元に残ったのは落ち目のフットボール選手1人だけ。でも、その選手とぶつかり合いながら信頼関係を築き、最後は大舞台で大活躍して喜びを分かち合うという話です。

あの頃はまだVHSビデオの時代で、それこそ擦り切れるくらい、何百回も英語のセリフを覚えるくらい観て。自分はまだ将来どんな仕事をするか分からなかったけど「こういう感覚を味わいたい」とそのとき思ったんです。それで、つい先日、久しぶりにDVD版で観たら、これが泣けたんですよ。

学生の頃も感動したけど、あのときより感動したんです。なぜだろうと考えたら、いろんなシーンが、自分が10年やってきた今の仕事とかぶっていたんですね。僕はエージェントではないけれど、それこそ“自分の選手”という感覚とか、アスリートとの信頼関係とか、すごく重なる部分があって。スポーツが好きな白田さんが観ると、感じるものが沢山あると思いますよ。

白田:面白そう。ぜひ観たいと思います!

酒井:ぜひ何百回も観てください(笑)

白田:はい(笑)では、今、一番会ってみたい人っていますか?

酒井:う~ん…。会いたい人は会ってる人が多いんですよね…。ちょっと待ってもらっていいですか?

(※20分ほど悩んだ末に…)

酒井:いました!千葉ロッテマリーンズの西村徳文監督に会いたいです。会ってお礼が言いたいんです。父親の影響もあり、物心付いた頃から、ロッテオリオンズの大ファンだったんですが、当時現役だったのが西村さんで、僕のヒーローでした。

いつも川崎球場へ行って、試合後に球場の外で選手にサインを貰っていたんですが、西村さんにはどうしてももらえなかったんです、車で帰っちゃうから。今でも覚えていますよ、黒いBMW(笑)僕はどうしても西村さんのサインが欲しくて、それでとうとう小学校6年の時に、球場から出てきた西村さんの車の前に、両手を広げて飛び出しちゃったんです。

白田:危ない(笑)

酒井:普通なら「バカヤロー!」って怒鳴られると思うんですけど、「サイン下さい!」ってお願いしたら、窓を開けて「そこの角を曲がった所で待ってるから」って。まさかと思ってダッシュで車を追いかけたら、本当に角を曲がった所で待っていてくれたんですよ。サインそのものも嬉しかったけど、何より西村さんの優しい対応が、僕の一生の思い出になったんです。

だから、僕の小学校の卒業文集のタイトルは「川崎球場」にしたんです。その空間がいかに魅力的かを書いたんですよ、人生12年の総決算として。書き出しは「川崎球場はボロい、狭い、汚い。でもそこがいい」「選手はやさしくてサインをたくさんもらえる」と(笑)

白田:褒めてるんですか?(笑)

酒井:褒めてますよ(笑)その時のお礼を西村監督に会って言いたいです。実はうちのロッテ担当記者が西村監督に僕のエピソードを話したんですよ。西村監督も「おお!今度、監督室に連れて来い!」と言ってくださって、何度かマリンスタジアムに足を運んだんですが、やっぱり僕としては恐れ多くてまだご挨拶できていないままなんです。必ず、お会いしてお礼を言いたいです。

スポーツって、華麗なプレイとかだけじゃなくて、一枚のサインが一生の思い出になったりするんですよね。もしかすると、西村さんの存在が僕の今の仕事の原点というか、繋がっているかも知れません。白田さんは一番会いたい人は誰ですか?

白田:私は2つあって、1つはミーハー的な気持ちで「嵐」。あれだけ人気があって、とても忙しいはずなのに、いつも笑顔を絶やさず見る人を元気にするパワーはすごいなと思います。あと、もうお亡くなりになっているんですが「ウォルト・ディズニー」です。私はディズニーにとても影響を受けていて、エンターテイメントの原点だと思いますし、紆余曲折ありながら、あそこまでのものを作り上げていった信念などを聞いてみたいです。

酒井:その感性、白田さんはスポーツディレクターに向いていると思いますよ。

白田:本当ですか!

酒井:テレビのスポーツの仕事には、嵐的な部分もディズニー的な部分も含まれていますから。ドラマ・映画のようなエンターテイメント性も、報道ニュースなどのドキュメント性も、つまり、スポーツにはテレビの要素が全部あるんですよ。

筋書きはないけれど、取材をしながら、リアルタイムで頭の中で台本を書いていったり。すごくいろんな要素を楽しめるので、向いていると思います。

白田:ありがとうございます!最後の質問なんですが、酒井さんにとって「ディレクター」とは?

酒井:人を幸福にする仕事ですね。自分が感じたことを、テレビを通じて人に観てもらい、ハッピーな気持ちになってもらう。スポーツって報道とは違って殺人事件や汚職事件など人の罪を扱うことが基本的に無いんですよ。やっぱりスポーツって世の中や人をハッピーにして勇気を与えてくれるものですからね。それをどれだけ伝えられるか?そのために日々研究している。そんな仕事です。