友寄隆英ディレクター × 浜田壮瑛~WonderNotes Inspire~刺激人
兵庫県出身。テレビ朝日ディレクター。
19歳からテレビ業界でADのアルバイトを始め、フリーディレクターを経て2003年にテレビ朝日に入社。
現在の担当番組は
『いきなり!黄金伝説。(木曜19:00~19:54)』、『お試しかっ!(月曜19:00~19:54)』、『「ぷっ」すま(火曜日23:15~24:15)』、『SMAPがんばりますっ!!(特別番組)』、『よゐこの無人島0円生活(特別番組)』。
慶應義塾大学法学部政治学科3年。高校1年生の時に学校の授業で映像と出会う。2010年3月に開催された『第4回TOHOシネマズ学生映画祭』はじめ、複数の映画祭で入選を果たす。
現在は映画を中心とした映像制作の活動、同大学・ダンスサークルの映像制作も担当している。
―――今回の対談は、冒頭から意外な展開に・・・―――
浜田:僕の自己紹介をさせていただくと…。
友寄:慶應大学でしょ?
浜田:(笑)。浜田壮瑛と申します。慶應大学法学部政治学科3年です、宜しくお願いします。
友寄:お願いします。
浜田:僕はずっと映画を撮っているんですよ。その作品をコンペに出したりとか…。
友寄:あ、何か聞いたことある。
浜田:本当ですか!映画を中心にCMとか映像とか作ってて、テレビも興味があってという感じの流れで今日、呼んでいただいたんですけど。
友寄:え~、じゃあ俺の名前を聞いた時、知ってると思わなかった?(※以前、2人はテレビ朝日のインターンシップで面識あり)
浜田:友寄さんの名前を聞いた時は驚きました。(自分のことを)覚えてくれていたら嬉しいなぁと。
友寄:でも、テレ朝とCX(フジテレビ)、受かったらどっち行く?
浜田:こっち(テレ朝)ですね。
友寄:ウソつくなよ!(笑)。CXやろ!
浜田:多分、両方受かんないんですけど…以前、お会いしたことを覚えていただいていて、ありがとうございます。
友寄:もっと色が黒かった、ちょっと白くなった?
浜田:(笑)。そうですね、ちょっと遊んでましたから。
友寄:(笑)。目が印象的やったし輝いている。やる気なんやろなぁって。
浜田:ありがとうございます、それは嬉しいですね…本当に嬉しいですね。
友寄:(笑)。
浜田:今、第一線でご活躍されていると思うんですけど、もともとテレビのディレクターになろうと思ったキッカケというのは?
友寄:いや、全然テレビに興味はなかった。
浜田:そうなんですか!?では、何に興味があったんですか?
友寄:動物病院の医者になりたかったの。
浜田:獣医さんになりたかったんですか!?
友寄:動物好きやから。獣医になりたかったけど、最初からそれになる努力をしなくて。えっとー、19くらいの時かなぁ、日テレの『珍プレー好プレー』でバイトを始めて。
浜田:テレビでバイトをされたってことですか?
友寄:うん。テレビのバイトをしてたんですよ。
浜田:僕も下調べもできていない中で申し訳ないんですけど、(友寄さんは)もともとテレビ朝日ではない?
友寄:ないです。フリーでやってたから、バイトから入って、それこそADは制作会社でやって。
浜田:学生時代から?
友寄:うん。ワイドショーもやったし、スポーツもやったし、バラエティーもやったし、VP(ビデオパッケージ)もやったし。
浜田:その中でバラエティは面白いという結論に至ったということですか?
友寄:うん。バラエティはVTRが生きてるから。決められてないやん、終わりがないから。浜田くんは映画とかやってるんでしょ?
浜田:はい。
友寄:映画でワンシーンとか作るのはものすごい難しいことやと思う。(バラエティは)その演者さんの可能性を、自分たちが作った構成という枠組みに入れて任せるっていう。だからバラエティは何が起こるか分からないし、答えが決まっていない。
例えばこの前、香取慎吾さんと『お願い!ランキング』っていう番組を撮ってたとき、10分間だけコーナーを作りたいっていって、香取さんと俺が対談したの。香取さんとずっと話してて10分ぐらいの取材のはずが1時間ぐらい撮ってて、結局それが今度10月2日に1時間、「面白かったから枠とりましょう」って話になって。
浜田:いいですねー。
友寄:そういうちょっとしたスタート、「5分だけまわさせてもらって良いですか?」が1時間番組になるっていうのはやってて楽しい。
浜田:それは、今おっしゃってたように、バラエティならではの楽しみというか心地よさということですよね?
友寄:失敗することもある。ものすごいでかいタレントを仕込んで、時間も丸一日とったのに全く放送できないとか。もしかしたらドラマみたいな「作品」じゃないのかもね。
浜田:これは絶対台本にないだろうなぁというのが、OAにのってたりするのはなんとなくあって、そういう番組を見てると、テロップをバァーンってのっけて面白くやってるのは確かにあるなと思いますね。
友寄:うん、あると思う。
浜田:今度、テレビ朝日で『Vドリーム』という企画に映像を応募しようと思ってるんですが、アドバイスがあればいただけますか?
友寄:募集しているVTRは何分とか決まりはあるの?
浜田:3分です。“ハッピー”をテーマに何でも良いということなんですが、3分で伝えるにはどうしたら良いのですか?
友寄:それ、すげぇ難しいと思うな。ハッピーをテーマに3分のVTRを作る…それは賞をとりたいってこと?
浜田:そうですね。僕はニーズとかあまり気にしていないんですよ。ハッピーというテーマでしか書いていないんで、自分なりに解釈して勝手に撮ろうとしてるんですけど。具体的に“こういう作品はどう”ということじゃなくても、気をつけた方が良いというのはありますか?
友寄:いや、すごい難しい、すごい苦手やもん。そういう賞レースっていうのは自分が本当にハッピーと思える映像を作って参加することに意義があると思う。だって、俺が出したって絶対に通らないし、絶対に勝てないもん。3分でハッピーの作品を作って、それで良い評価を受けなさいっていわれたら、絶対1位なんかなれない。だから賞で1位をとりたいとすれば…それすごい難しいなぁ、なんか番組みたいになっちゃうもんな。
その番組の趣旨をよく理解して、傾向が分かって、3分間で見せ切るには、「これしかない」とか狙いを決めて、ドラマみたいにとかやるんやろうけど、俺なんか全然浮かばへんから…それ難しいなぁ。
浜田:僕も映画を撮ってて本気でやりたいことやって、コミュニティー映画祭に出すと入選はするんですけど、賞はもらえないんですよ。ずっとそこのラインで悔しいけど、すごい満足はしてるんですよ。
友寄:参加に意義があんねんけど、その番組ですごい良いなぁと思うのは、ハッピーを題材に3分のVTRを作れって言われてること。みんなの意思の中で…例えば陶芸作る時に粘土はあるよ、ハンバーガー作るんだったらパンと肉がいるけど、これって最初からなんにもないねん、自由やん。俺、映像が好きなのってそれやねん、自分の頭の中の発想が勝手に画にもなるし、音にもなるし、人の心の中に入るものも作れるし、失敗すればミスも起こる。最初は何もなくて紙との格闘から始まんねん、中身でこんなことをしてみたいなぁとか、絵にしてみたり。
無人島生活も最初のスタートは、僕が発泡スチロールを切り抜いて、水に浮かべてたのを会議に持っていって「僕、これしたいんですよ」って言ったのが始まりで、「なんなのそれ?」って言われたから「無人島なんです」て答えて。発泡スチロールの上にニワトリと人のフィギュアを置いて木をポンって立てて、「こういう風に無人島で1人で生活するのをやってみたいんですよ」って。誰にも伝わらなかったけど、みんな「やってみたら」って言ってくれて。今考えると3時間の番組を作らせてもらったスタートが、あの発泡スチロールを浮かべたことから始まってん。
浜田:へー(驚)。
友寄:この前やらせていただいたSMAPの『毒トマト殺人事件』は簡単に書いた手書きの文章でジャニーズ事務所の人に「これやってみたいんですけど」って話したんやけど、鍋に入ってるトマト1個書いて『トマト鍋殺人事件』って書いて、その紙を見せてん。「実はこれ、全部のバラエティが1個につながっていて…“トマト鍋殺人事件やりたいんですけど”」って言ったら、その言い方が必死で面白かったんちゃう?「分からんけどやったら?」って言われて。
スタート時点で自分の思いをその紙に書いたりすることから始まって、それが文章だけじゃなくて、俺らの仕事って映像もやってるから、だとしたらやるべきやと思う。だから『Vドリーム』をやる23歳以下の人に自分が助言して“こうすれば面白いものができる”っていうのが本当に言えなくて申し訳ないけど、ただ、やってる人をすごい良いなぁって思うし、1個でも良いから参加してほしい。仮に自分がハッピーな映像を作れっていわれたら…陶芸の回るヤツ、あれを見てるのがすごい好きやねん。
浜田:(陶芸を)やられるんですか?
友寄:やらへん。
浜田:(笑)。
友寄:ずーっと見てるのが好き。その“ろくろ”で何かやってみたいと思う。ろくろを回して陶器が完成して。それが人の手に渡って。割れるまでをずっと取り続ける。そこにひとつ位はハッピーになれるモノがあると思う。陶器が好きなら、それをきっかけに追っかけてみると別のモノでハッピーになれるかも。
浜田:やっぱり発想が全然違いますね。友寄さんはすごく真っ直ぐなところがあるじゃないですか、それって計算でもなく、100%の気持ちで面白いと思ってるものがあるじゃないですか。
友寄:気持ちだけじゃなくて、ちゃんとやってるよ。
浜田:その真っ直ぐな気持ちがすごいなぁと思います。
友寄:本筋食ってないと今後のテレビはないと思う。自分が面白いと思ってないと絶対(数字は)とれないと思うし。『黄金伝説』は認められてない気がするから一生懸命やってるのよ。他の番組よりも絶対に努力してるし、組織力が強いから絶対にどの番組よりもやってる。
だけど自分で“絶対これ面白いよ”とか思えてないところがあるかもしれないけど、努力はしてるし気は遣ってるよ。まずいラーメン屋のおっさんが、「うちのラーメン美味いよ」って言ってるんじゃ駄目だと思う。一般的に受けられなきゃ駄目なんだけど…。
浜田:はい。
友寄:『Vドリーム』のヒント思い付いた!多分、狭い世界に絞った方が賞をもらえると思う、3分間やから。どう?
浜田:狭い世界ですか?
友寄:その方が面白いと思う。広くしすぎると3分持たないと思う。
浜田:具体的にはどういったものですか?
友寄:例えば、この部屋の中だけで3分撮ろうとしたら面白い気がする。自分がハッピーになる映像って本当に面白いものになっちゃうけど、人をハッピーにさせる映像を考えると見せ物になっちゃう。色だけに絞るとか…でも最後にオチがあった方がええんちゃう?
浜田:『Vドリーム』はエントリーが10月末までなんですけど、自分も作品を1つ思い付いてて、ストーリーがあるちょっとしたドラマ仕立てにはしたいと思っています。
友寄:狭い世界っていうか自分の中で追い込んだ方が良いのかなぁって思って、本当に1個の目線にしてないと分かんなくなっちゃうと思う気がする。でも『Vドリーム』みたいのをやり始めるのは良いと思うし、もし迷ってる人がいたら、すごい狭い世界でやってみるのは面白いと思う。これはヒントになるか分からないけど、面白いものはできると思う。例えば自分がハッピーになれる一番好きなものを1個だけに絞って、それを作っていくみたいなものかもしれない。
浜田:『映画祭』などで作品を出す時、いつも求められていることより、やりたいことを優先してしまって結果(賞が)とれないということがあるんですが、それは大丈夫ですか?
友寄:ん-、テレビに入ったらそれは駄目。やっぱり視聴者の目線に合わせなきゃいけないけど。
浜田:見てる人がどう思うかというのは考えるんですけど、映画祭のニーズには沿ってないんですよ。ただ枠組みで出してる感じなんですけど。
友寄:色々とそんなことも考えつつ、その映画祭に出すことがすごいことやと思う。賞をとりたいから一生懸命頑張ったりとか、自分の目線をどこかにやって、やりたいことをやるのか、だから、「賞をとりたいなぁ」と思ってやるのもひとつやし、これに関しては賞とれなくても本気でやろうと思っても良いと思う。だって映像が好きだからやってるわけやん、そこが良いなぁと思う、若いくせに(笑)。
自分が23歳のときはできたか分からないけど、本当にテレビやりたいとか映像やりたいとか思ってる人は、「賞とれないんちゃうか」とかじゃなくて、やってみた方が良いなぁと思う。自分の経験の中でアドバイスするんだったら、本当にこの番組やってみたい、ハッピーな映像を作ってみたいと思ってる人がいたら、すごい狭い世界を描いた方が面白いかなと思う。“ろくろ”だったら“ろくろ”だけで作るとか。例えば24時間撮り続けんねん、それでポイントだけつないだとしたら、それってストーリーになる気がする。その人のストーリーかもしれないし、作ってるものかもしれないし、絶対に何か生まれる。自分の世界観があるやつはそこで作れば良いし、ない人は逆に狭いところにいってみたらどうかなぁと。
あと食べ物は絶対に無理!食べ物にいく人がたくさんいるから、そこ被っちゃうと勝てへんと思うかなぁ。何かもっと狭いところとか自分の好きなこととかを撮り続けたら、いっぱい編集してるうちに何かできるかなぁと思う。動物園に行って、パンダとか可愛い赤ちゃんの顔とか撮り続けて、それを見てハッピーになる人っていっぱいいると思うねん。そうじゃなくて自分の好きな動物だけを撮り続けている方が人との差、自分らしさが出て良いかなぁって思う。
浜田:(賞を)狙わない方が良いんですか?
友寄:狙えるやつは狙った方が良い。けど狙えへんやつもいるわけやん。そっちの立場の方が自分は分かるかなぁ。狙えないけど何か面白いもの撮ってみたいなぁって思ってる人って、俺が思うにすごいちっちゃいところだったりするから、何も浮かばない人は狭いところが良いと思う。追っかけたら何か撮れるなぁと思う。